レザーコート

これは2003年のお正月の事である。報道関係に勤務しているUさんは、お正月を実家のある

札幌で、しかしのんびりと過ごす間も無く一月三日支社の有る函館への帰路に着いた。冬道での

長距離ドライブは危険なので今日はゆっくり景色でも楽しみながら走ろうと思いつつ郊外まで来た時

であった。Uさんに一軒の古着屋さんが眼に入った。何故か引き込まれるように車を泊め店内に

入った、その時であるUさんが以前から欲しかったレザーのコートが眼に入ってきた。

Uさんは普段幾ら良い物が有っても古着はいやだと言う感じが有ったのだが、今日はそのコートが

無性に欲しいのである他にも数着新品同様のものがあったが、何故か頭の中で「これを着れば冬

の現場での仕事が快適だ!」と妙に納得してしまうのであった。レジに行くと店主らしき人がニコニコ

しながら「あんたにピッタリだよ」と言いながら代金まで引いてくれた。

Uさんも「これは良い買い物をした」と思いながら函館への帰路に着いた。しかし峠を越えたあたり

から、急に車内に異臭が漂いはじめた。Uさんは道端に車を止め原因を調べた。

ボンネットを開けるとどうやらエンジンが過熱している様子だった。

またラジエーターからも湯気が吹き出ていた。Uさんにとって初めての経験と言うより何故さっき迄

快適に走行していたのに、と言う疑問のほうが強かった。しかしこうして居てもしょうがないので、

携帯電話でJAFに連絡する事にした。しばらく待つと近くのJAFの係員が来た、そして車を見て貰

うと「原因が解らないので、工場で検査します」との事、そしてUさんは、近くの駅まで送ってもらい

汽車にて帰路についた。やがて夕方函館に帰函、ぐったり疲れたUさんは、真っ直ぐ住まいのマン

ションへ。マンションへ着いたUさんは、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと一気に飲み干した。

「本当に今日は何て一日だ」と呟いた、やがてUさんはビールの酔いと疲れからそのままソファー

の上でウトウトし始めたしばらく経つとUさんは妙な胸苦しさを覚えた。

そして身体を動かそうとしても動かない頭の中で何故だと言う思いが渦巻いた。

しかしどういう訳か目だけは自然に明けることが出来たのである。Uさんが部屋を見回すとそこに

陽炎のように中年の痩せた男の人がじっと自分を見ているのでした。驚いたUさんは、声を上げ

ようとしたが、でないUさんはこの時初めて「これが金縛りか」と思ったと言う。すると気持ちが何故

か楽になりもう一度その男に目をやった。するとその男はうなずくと言うか会釈と言うか頭をこくり

とした、その瞬間白い陽炎のような物が風船でも縮むように男と共に消えてしまった。そしてその

場所には今朝買ったハンガーに吊されたレザーコートだけが揺れていた。不思議な事に今まで

動かなかった身体が重しでも取れたように簡単に起きられたのである。次の日出社したUさんは、

このことを同僚に話すと皆同様にお払いを進めた。

Uさんは気が進まなかったが、神社でお払いを受けた。それ以降Uさんには何の変化もなく今日

まで日常を過ごしている。但し不思議なこと2点を除けばそれは、後日JAFから車の件で連絡が

入り異常は見られなかった。

何故ラジエターの冷却水が急に少なくなったのか、解らないと言う、もう一つはその後一度仕事

で札幌へ行き、あの店を探したが、どうしても場所が解らなかった。最後に本人は「あのまま車

で函館へ向かっていたら、ひょっとして大きな事故にでもあったかもしれないレザーコートは自分

の守護霊では」そう結んだ。そして今もレザーコートはハンガーに吊され部屋の隅でじっと冬を

待っているのだ!!


よろずや

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